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How To Create Products Customers Love

第16章 市場調査

16章 市場調査
その可能性と限界を理解する

たいがいの会社では、マーケティング部門と製品開発部門との間には何らかの緊張関係があるものだ。よく意見が分かれるのは、さまざまな市場調査 (マーケットリサーチ) の手法は、製品を見つけ出すプロセスで使えるのか、という点だ。たとえば、フォーカスグループ、顧客アンケート、サイト分析 (site analytics)、訪問調査 (site visits)、使用感テスト、実地テスト、競争的分析といったものである。

困ったことに、この議論は相当混乱した状況にあって、さまざまな立場からの意見がこれに拍車をかけていると思う。マーケティング出身の人たちは、市場調査の手法は役に立つと言うし、製品開発出身の人は、そうした手法には限界があると言う。その結果として起きているのは、ある製品開発チームは、市場調査でもたらされる情報を活用しないために有望な市場を見逃してしまい、またあるチームは、市場調査の手法では答えを出せないような問題だというのに、こうした手法に頼ってしてしまうものだから、どうしていいかわからなくなっている。

これは重要なテーマであるが、ここでは主な市場調査の手法について議論し、製品を見つけ出すプロセスでそうした手法をどう使えばいいか、また、どういうときは使えないのかを検討してみたい。

市場調査の手法は、この 10年で飛躍的に進歩した。ここでは簡単な説明にとどめるが、新しい技術が使われるようになって大勢のユーザーや顧客に容易に接触することができるようになったことで、かつての懸案事項の多くが克服されてきている。こうした技術は、ユーザーの活動や行動様式 (彼らはだれなのか、製品を使って何をするのか) を分析するときも役に立つだろう。とは言うものの、市場調査の手法には依然として限界があり、それは非常に根本的なもので、しかも本質的にいかんともしがたいものなので、ここを理解することもまた重要である。

市場調査の可能性
まず、主にどんな手法があるか、ざっと見ていこう。

顧客アンケート インターネットのおかげで、この手法はより手軽で効果的なものとなった。コンジョイント分析 (ユーザーが好む要素の順位を探るのに役立つ) などの手法と組み合わせれば、顧客アンケートは本当に簡単でコストもかからないので、どの製品でもぜひやるべきだ。ただ、気を付けなければならないことが 2つある。まず、調査の質問そのものを考えるにはちょっとした手腕が必要で、思ったほど簡単ではないということである。調査に使う質問や状況設定は慎重に考えよう。そうしないと、社内の他の人たちは、調査結果を信用してくれなくなるだろう。みんな、「怪しげなデータを入力しても、しょうもない答えしか出てこない」と言うにちがいない。質問が曖昧な言い回しだったり偏った表現だったりすれば、まさにそのとおりだろう。もう 1つの注意点は、社内の人たちには、顧客アンケートで得られるデータは、解決策そのものを示すものではなく、解決策にたどり着くためのインプットの一部でしかない、と理解してもらうようにしよう。ユーザーが「X がいい」と回答してきたとしても、X ではなく Y を提供する方が得策かもしれないのだ。

サイト分析 製品がウェブサイトである場合、ユーザーがそのサイトをどう使うのか知るのに、ものすごくいいツールがそこらじゅうにある。こうしたツールをサイトで使うには、そのサイトに多少の設定をしなければならないが、それをやるだけの価値はある。早い段階からサイト分析ができるように設定しておいて、継続的に確認して動向をつかみ、サイトを調整するといい。ウェブサイト以外のソフトウェア製品であれば、製品がどう使われるかについての有用な情報を記録し、その情報が会社の担当部門に送信される仕組みを製品に仕込んでおくとよい。顧客に対しては、送信される集積データには、個人を特定できるようなデータは含まれないことを明らかにしておかなければならないかもしれないが、それでもこうした仕組みを利用する価値はある。

データマイニング 上で説明したサイト分析、請求内容、ユーザーアカウント情報、製品独自のデータなど、いろいろなところからデータが集まってくる。今では、こういうデータを収集して分析するためのツールは、以前よりもずっとよくなっている。たとえば、特定の組み合わせのサービスを使う人の男女別の内訳を知りたいだろうか? それとも、特定のペルソナについて、アクティビティのレベルや分布状況を知りたいだろうか? こういう疑問やその他の何千もの疑問に対しては、新しいタイプのデータ分析ツールを使えば、普通なら、すぐ簡単に答えを求めることができるだろう。

訪問調査 ユーザーが実際に製品を使っているリアルな生活環境 (自宅、オフィス、ショッピングモールなど) まで出向いて話をするのに勝るものはない。お金も時間もかかるけれど、訪問調査をやるたびに、他のどの方法でも得られないような収穫がある。訪問調査は大いに有効だが、コストや時間を考えると、調査の対象は厳選しなければならない。

ペルソナ 特に製品を定義したりデザインしたりするときにお勧めしたいのが、ペルソナを使った手法だ。目的は違うが、マーケットリサーチャーも、よくペルソナを活用する。まずは、たった 1人の「ユーザー」というものは存在しないと認識することが大切だ。やるべきことは、世の中の主なユーザーのタイプ (現在の顧客かもしれないし、将来の顧客にしたいと狙っている人たちかもしれない) について深く理解することである。詳しくは、第17章「プロダクトマネジメントのためのペルソナ」を読んでほしい。

使用感テスト 私は、ユーザビリティテストの熱心な愛用者であり、これを早くから事あるごとにやることをぜひとも勧めたい (第22章「プロトタイプテスト」参照)。この手法は、発売中の製品についてユーザーが実際にどう思っているのかをもっとよく理解するためにも使える。基本的に、使用感テストというのは、製品を使っている最中のユーザーの目になって、製品を見るための方法である。ユーザーがワクワクしたりイライラしたりする状態を正確に読み取ることができるし、また、ユーザーの言葉だけではなく行動も観察できる。使用感テストを遠隔でやるツールや、ユーザーのやったことを正確に記録して分析するツールもある。絶対に必要なものではないが、あれば喜ばれるツールだ。

競争的分析 製品開発チームは、ライバルから学ぶことなどない、とばかりにバッサリ切り捨ててしまうことがよくある。でも、私の経験では、どんな製品でも少しぐらいはいいところがあるもので、それらを見つけるのがみなさんの仕事である。ライバルの製品のいいところや誤りから学ぼう。

こうした手法を使えば、以下の問いに対する答えを突き止めるのに間違いなく役に立つはずだ。以下の問いは、製品についての重要な課題である。

・ 本当のユーザーがだれかを理解しているか?

・ ユーザーは製品をどんなふうに使っているのか?

・ ユーザーは製品をどうやって使うのかを理解できているか? ユーザーはどこでつまずいているのか?

・ なぜユーザーはこういう製品を使うのか?
・ ユーザーは製品のどこが気に入っているのか?

・ ユーザーが製品にあればいいと思っているものや、変えてほしいと思っているものは何か?

市場調査の限界
以上の質問は、決定的に重要なものだが、「どんな製品を作ればいいのか?」という、多くの製品開発者にとっての根源的な疑問に直接向き合うものではない。市場調査による情報は、製品を創造するプロセスへの インプット一部とはなるが、市場調査で製品の方向性を決めようとすると、問題を抱えることとなる。

製品を見つけ出すプロセスとは、次の質問に対する答えを突き止めることである。

・ この問題をより優れた方法で解決するためには、どの技術を応用できるか?

・ どんなユーザーエクスペリエンスであればいいか?

市場調査の手法は有用ではあるけれど、市場調査から作られた製品で成功を収めたものがあるという話は、今まで聞いたことがない。Google、eBay、iPod、iPhone、FaceBook、MySpace、どれも違う。

製品化の成功は、ユーザーのニーズをよく理解し、今まさに実現可能なことが何なのかを深く理解することから生み出されるのである。

顧客に何を望んでいるかと単純に尋ねることができればいいのに、と思う。だが、そう問いかけたところで、せいぜい今持っている製品の延長線上にあるようなものが作れればまだいいほうだ。それよりも、間に合わせの機能を手当たり次第に寄せ集めたようなものができ上がるだけで、みなさんが求めるような斬新で劇的に優れたソリューションにたどり着くことはできないだろう。

既に製品が発売されていて、実際にそれを使ってくれている顧客がいる場合は、どこが気に入っていて、どこが気に入らないかといったことについて彼らと話すことで、たくさんのことを学べるし、改良した機能についてどう思っているのかを知ることもできる。大事なことは、市場調査について、それぞれの手法の限界を理解することであり、また、市場調査から得られた情報は、新たな製品の着想を得るというよりは、むしろ、今ある製品を改良するためのものだということである。

というわけで、市場調査の手法は、製品を改良するのに役立てるために活用して、今の製品をできるだけいいものにしてほしい。それでもって、市場調査の手法が、次世代の Facebook、Flickr、YouTube とでも言うべきもののアイデアを生み出してくれる、などとは期待しないでほしい。

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