あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
Inspired日本語版は、まもなくPart1(人材編、全10章)が公開完了し、続いてPart2(プロセス編)、Part3(製品編)に進む予定です。
さて、今回は第8章をアップします。この章は、パットン将軍の言葉 “Never tell people how to do things. Tell them what to do, and the will surprise you with their ingenuity(どうやるかを指示してはならない。何をやるかを指示すればいい。そうすれば、部下の創意工夫に驚かされることになるだろう)”から、プロダクトマネージャー(第1章)が学ぶべき2つのこと、顧客の声の聞き方、ユーザーエクスペリエンスデザイナー(第4章)やエンジニア(第5章)に対しての指示の仕方について語られています。
この話、プロダクトマネージャーに限らず、市場の声の聴いたり、チームメンバーの創造力を引き出す上でも参考になると思います。
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第8章 パットン将軍の教え
目標を与えれば人は動く
「どうやるかを指示してはならない。何をすべきかを指示すればいい。そうすれば、彼らの創意工夫に驚かされるだろう。」
ジョージ・スミス・パットン ジュニア
パットン将軍は実に並外れた人物だった。彼についてわかっていることから判断すると、将軍はなかなかのプロダクトマネージャーになれたと思う。彼の発言は、数多く引用され、数多くの助言を与えてくれる。ここでは、冒頭で引用した言葉について考えてみよう。この言葉は、プロダクトマネージャーには 2通りの方法で当てはめることができるのではないか。
まず、人の話を聞く場合で考えてみる。顧客やユーザーは、プロダクトマネージャーに対して、何をするための製品かではなく、どのように動くのかを訴えることが多い。私たちもみんな思い当たることがある。人間というのは、問題に対する解決策を思い描こうとするものだからだ。でも、プロダクトマネージャーが解決しなければならない問題を集中して取り組んでみると、いちばんいい解決方法を決めるのに迷うほどたくさんの案が出てくることに驚かされるだろう。
現実には、顧客やユーザーが何かいい解決策を思いつけるわけではない。彼らには、そもそも何ができるのかなどわからないのだから、どうやって解決するかを想像するのはちょっと無理だろう。
では、逆に、人に話をする場合、ここでは、プロダクトマネージャーが、ユーザーエクスペリエンスデザイナーやエンジニアに対して、その製品が何をするものかではなく、その製品をどう設計してどうするかを指示する場合について、考えてみよう。これは、特に、ユーザーエクスペリエンスデザインでよく起こる問題である。しかも、たいていの会社のデザインに関する実態は、この問題をさらに悪化させている。社内にはデザインの担当者があまりにも少な過ぎるのが実情であり、場合によっては、プロダクトマネージャー以外にインタラクションデザインの人手がなかったりするのだ。
あいにく、インタラクションデザインの技能はプロダクトマネジメントとはまるで違っていて、しかも、両方とも得意なプロダクトマネージャーはめったにいない。さらに、この事態を複雑にしている別の問題もある。多くの会社では、ユーザーエクスペリエンスデザインをやれる人がサービス部門にいて、製品の仕様が固められてしまった後に、必要なときだけ引っ張り出され、デザインを手伝わされている。こういうやり方では、いいデザイナーでもまともに活躍できない。デザイナーというのは、製品開発のうんと早い段階、つまり、プロダクトマネージャーがターゲットとなる市場を把握してソリューションを考えている段階から参加してこそ、その真価を発揮できるのだ。
プロダクトマネージャーにとって、次の 3つの条件がそろっていれば、いい製品の着想を得るのに大いにプラスになる。
(a) ユーザーエクスペリエンスデザインの役割を十分に理解していること。
(b) 社内にユーザーエクスペリエンスデザイン担当者がいて、製品開発に参加してもらえること。
(c) ユーザーエクスペリエンスデザイナーに、自由に解決策を提案できる裁量を与えていること。
有能なユーザーエクスペリエンスデザイナー、特にインタラクションデザイナーはなかなか見つからない。現状の高等教育には、こういうものすごく重要な人材を養成するカリキュラムがないのだ。もし、そういう人材が見つかったら、とことん活躍してもらおう。製品開発チームの中心人物の 1人として、顧客の訪問、ペルソナの設定、製品の案を練るためのブレインストーミング、製品戦略や開発スケジュールの決定といった場にも参加してもらおう。デザインの代替案も考えてもらい、ユーザーの行動や好みについての意見も出してもらってしっかりと耳を傾けよう。
これは、デザイナーだけでなく、エンジニアにもあてはまる。プロダクトマネージャーが客先から製品の仕様を細かく指図されたくないのと同じように、エンジニアリングチームは、プロダクトマネージャーには製品の実装の細かいことまであれこれ言ってほしくないと思っている。私の経験では、プロダクトマネージャーとエンジニアの間の役割分担はかなりはっきりしているので、そういう問題はそんなに起こらないはずだ。それなのに、仕様をレビューすると、いまだにこういったことが起きていることがわかる。
解決しなければならない問題をどうやって解決するかを考えるときは、エンジニアやユーザーエクスペリエンスデザイナーに裁量を与えて自由にアイデアを出してもらおう。そうすれば、彼らが顧客に喜んでもらえる解決策を見つけ出してくれる可能性は、いっそう高くなるだろう。