こんにちわ。
13章は、Product Principlesについて書かれています。Martyのブログをみると、Product Manifestoとも呼ぶようです。ここでは製品理念と訳しています。
製品理念ではありませんが、日本企業が掲げる「理念」として思い浮かべるものがふたつあります。ひとつは、ソニーの設立趣意書です。この冒頭文、「真面目なる技能者の技能を最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」は有名ですね。もうひとつは、三菱商事の三綱領「所期奉公、処事光明、立業貿易」です。また、この10年くらいでとても話題になったものに、グーグルのDon’t be evilがあります。
経営や製品サービスに関して何か判断をする時、何を大切にして決めるかという判断の拠り所となるもので、ソニーにしてもグーグルにしても三菱商事にしても創業者の哲学が表れていると思います。
それでは、どうぞお楽しみください。
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第13章 製品理念
何が大切かを決める
製品理念とは、製品開発のための一連の原則を定めたもので、両立させるのが難しいものがうまく折り合うところを見極めて何を優先させるかを決めるときに、大きな拠り所となる。製品理念は、信念や目的を社内の人たちに宣言するものでもある。私が製品開発をやるときは、製品理念を決めて公表することにしている。というのは、きちんとした製品理念をみんなに知ってもらえれば、それは、製品戦略を効果的に補ってくれるし、製品を見つけ出すプロセスがぐんとはかどるからである。
私が製品開発チームで仕事をするときは、まず私がビジネス戦略を理解して、次に、チームのみんなで最初にやる作業の一部として、製品理念となる一連の原則を決めることが多い。
製品理念を考えて作るのというのは、何が主で何が従かを決めることであり、また、戦略であるものや基本となるものは何か、単なる手段であるものや一時的なものは何かを決めることを意味する。
製品理念をきちんと整理するメリットは他にもある。製品理念を決める作業は、その会社の DNA とでも言うべきものや創業者が実現しようとしていることを理解する手段ともなるのだ。何よりも大事なのは、それぞれの製品についてのさまざまな代替案や会社にとっての数多くの選択肢といったものを評価するとき、製品理念は評価のための枠組みとなるのである。
製品理念は、製品の機能を羅列するものではないし、もっとはっきり言えば、特定の製品の開発に縛られるようなものでもない。この意味で、製品理念は、会社としての製品全体についての製品戦略、すなわち、創業時に作られる企業理念に沿ったものである。しっかりした製品理念は、みんなをワクワクさせるような製品のあるべき姿を決めるための基盤や土台となるのだ。
映画サイトの製品理念を例として考えてみよう。製品開発チームは、ユーザーが映画についてユーザーコミュニティーに掲載するコメントは、映画評論家の意見よりも価値がある、と設定したとする。この場合、もし後から映画の制作会社がこのサイトにプロの映画評論を掲載したいと言ってきたら、それがこのサイトの理念に合っているかどうかを決めるのに迷うことはないはずだ。
製品理念を広く公表するかどうかは、製品開発の目的次第である。製品理念は、製品開発チームのための単なるツールに過ぎず、製品戦略シートのようなもの、という場合もあるだろう。そうではなくて、ユーザー、顧客、パートナー、外注先などの業者、投資家、そして社員に向けて、製品開発についての理念をはっきりと伝えるものである場合もあるだろう。
製品理念を作るメリットはまだある。製品理念は、他のどんな書類よりも、製品開発チーム (特に、プロダクトマネジメント、ユーザーエクスペリエンスデザイン、エンジニアリング、マーケティングの担当者) を 1つにまとめて、考えを共有させることができるのである。
製品開発の指針となる製品理念を作るのは意味のあることだが、同時にその中での優先順位も決めておく必要がある。数多くの製品が、使いやすいだけでなく、安全で確実であることを目指している。けれども、問題はその優先順位だ。使いやすさ最優先か? それとも、安全性と確実さが第一か?
最後に、多くのチームが、さあ製品理念を決めよう、というときにやってしまう間違いについて指摘しておこう。1つは、あまりにも一般的すぎて、さっぱり役に立たない原則を入れてしまうことだ (たとえば、「信頼性の高いものでなければならない」など)。もう 1つは、製品理念とデザイン理念を混同してしまうことである。たとえば、共通のデザイン理念は、操作をわかりやすくするためのものである (そのおかげで、ユーザーは次に何をやればいいかがよくわかる)。でも、これは、製品理念ではない。
もし、製品開発チームの指針となる信念や理念がはっきり示されていないのであれば、チームのメンバーを集めて、何時間かかけて、プロダクトマネージャーであるあなたが重要だと考えていることについて議論し、1つずつ確認し、優先順位を決めてほしい。