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How To Create Products Customers Love

第6章 プロダクトマネージャーの条件(上)

おはようございます。

Part1人材の最初の5章は、製品開発チームの鍵となる役割(第1章)、すなわち、プロダクトマネージメント、プロダクトマーケティング(第2章)、プロジェクトマネジメント(第3章)、ユーザーエクスペリエンスデザイン(第4章)、エンジニア(第5章)について、それぞれの役割、そしてプロダクトマネジメントとの関係が説明されました。

今回からPart1人材の後半に入り、プロダクトマネジャーの条件や仕事の仕方について語られていきます。

第6章は、プロダクトマネージャーとしてどんな人を採用するのか、その資質とスキルについて説明します。本日は資質をお届けします。スキルは明日お届けします。どうぞお楽しみください。

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第6章 プロダクトマネージャーの条件
優秀なプロダクトマネージャーはどこにいる?

多くの CEO から寄せられる質問の中でいちばん多いのは、おそらく、「優秀なプロダクトマネージャーをどこで見つけられるのか」、というものだろう。

私はこう答える。「あなたがお探しの優秀なプロダクトマネージャーは、たいていの場合、すでに会社の中にいます。彼らは、たとえば、ソフトウェアエンジニア、ユーザーエクスペリエンスデザイナー、システムエンジニア (SE) などという別の肩書きの人たちの中に隠れていて、声がかかるのを待っていますよ」、と。ただ、プロダクトマネージャーを社内外から登用する場合、要領よく見つけるには、求める人材の特性をきちんと理解しておくことが大切だ。そこで、この章では、そういう人材の資質やスキルを挙げてみよう。

人間的な資質と姿勢

多くのスキルは学習可能だ。でも、資質については、教わるのがかなり難しいものもあるので、プロダクトマネージャーを探すにあたって、その土台となる資質は何かを整理しておく必要がある。

資質1:製品に対する熱意

世の中には、とにかく製品というものが好きで、製品とともに生き、食べ、呼吸しているような人たちがいる。優秀なプロダクトマネージャーは、どこの製品であっても、いい製品に対して愛情と尊敬の念を持っている。そして、そういう製品を創り出すために生きている。

この製品に対する熱意は、プロダクトマネージャーには欠かせない要素である。この熱意があればこそ、優れた製品を定義するために、長い時間をかけて多くの難題を克服していけるだけのやる気が湧いてくるというものだ。また、プロダクトマネージャーは、製品開発チームの他のメンバーを勇気づけなければならない。製品に対する熱意は人をも動かす。

面接している相手が製品に対する熱意を持った人物かどうかは、どんな製品が好きで、どうして好きなのかを質問するだけで簡単にわかる。熱意があるふりをするのは難しい。見せかけの熱意などすぐにばれてしまう。他の分野についても質問してみよう。もし自分がプロダクトマネージャーだとしたら、お気に入りの製品をもっとよくするにはどうすればよいか、また、ダメな製品をどうやって改善するか、質問してみよう。

資質2:顧客との共感力

理想とするプロダクトマネージャーは、業界の中にいるとは限らない (これについては長所と短所がある) が、プロダクトマネージャーには、ターゲットとする市場の顧客と共鳴する能力が絶対に必要だ。この資質をもった人材は、大量販売用の製品を作ろうとしているハイテク企業にはなかなかいない。私たちは、ユーザーのことを考えるとき、自分自身や自分の友人のことのように考えたくなるものだ。ところが、ターゲット市場のユーザーというのは、何が大切なのか、何を優先するか、どう感じるか、どこまでなら我慢できるか、どういう経験をしてきたか、技術についてどの程度理解しているか、といった点で、自分自身やその周囲の人たちとはまったく違っているものだ、と思った方がいい。

プロダクトマネージャーの候補者には、ターゲット市場について尋ねてみよう。そして、ターゲット市場がどれほど自分自身とは違っていると思うかも聞いてみよう。ターゲット市場についてどう思っているのかも探ってみよう。そして、何よりも、そのターゲット市場に対する敬意と共感があるか? それとも、ターゲット市場を「啓蒙」することが自分の仕事だと考えているのか?

この点は、海外展開する製品や、特定の国や文化圏に向けた製品である場合には、ますます重要となる。文化と文化の間には、多くの類似点があり、さらには、多くの相違点がある。相違点の多くは、よくありがちなもので、製品のプロフィールを決める上ではあまり問題ではない。でも、中には、本質的なところで影響が出るような相違点もある。あなたが今面接している候補者は、どれが重要でどれがそうでないかを判断できるぐらいに、ターゲット市場を十分理解しているだろうか?

資質3:知性

生まれつき頭がよければ、それにとって代わるものはない。プロダクトマネジメントとは、洞察力と判断力に尽きる。どちらも明晰な頭脳のなせるわざである。くたくたになるほど働くこともまた必要だ。でも、プロダクトマネジメントの場合は、ただただ働くだけではダメだ。

ものすごく頭の切れる人を雇うのは、思っているよりも難しい。採用担当者の力量と自信によるところも大きい。A級の人は A級の人を雇うが、B級の人は C級の人を雇う、ということわざを聞いたことがあるだろうか。これは本当だ。優秀な人を雇えば、企業文化にも影響を与える。企業文化は、これはこれで重要なトピックなのだが、ここでは、本当にいい製品を作ることを目指しているならば、本当に頭脳明晰なプロダクトマネージャーを見つけなければ絶対にうまくいかない、とだけ言わせてもらおう。

とにかく頭脳明晰で洞察力のある人を見つけたいのであれば、候補者の問題解決能力を徹底的にチェックする、という方法がある。マイクロソフトは、問題解決能力を見極めるために、候補者に徹底的に質問を浴びせて効果的な面接をやっていることで有名だ。そのやり方は、ある分野の 1人、あるいは数人の専門家に質問をさせて、候補者が問題にどう対処するかを徹底的に掘り下げるというものだ。面接官は、候補者が正しい答えを知っているかどうか (つまり、候補者の知識レベル) を見ているのではなく、むしろ、答えを知らないものに対してどう取り組むか、という点を見ている。候補者は、どのように問題を解決するのか? そこに至る思考プロセスはどうか? 候補者が解決策にたどり着くと、面接官は少し質問を変えてみて、候補者がどう対応するか尋ねる。こうしたやりとりは、候補者が答えを知らない状況で対応せざるを得なくなるまで続けられる。そして、そうした問題解決に向けてどう取り組むのか、言葉で表現するように求められる。この手法は、練習すれば、候補者の問題解決能力を見るのにかなり効果的だろう。

もうひとつの方法は、会社の中でもずば抜けて頭がいいと言われている人に、候補者の面接をお願いして、候補者の問題解決能力を判断するのを手伝ってもらうことである。

資質4:仕事に対する倫理観

製品開発チームの中でも、プロジェクトにどの程度関与し、どの程度のエネルギーを注ぎ込まなければいけないかは、役割によって変わる。でも、プロダクトマネージャーの仕事は、骨身を惜しまずに働くことを厭わない人でなければ務まらない。この仕事には責任が伴う。プロダクトマネージャーは、製品開発を成功させる最終的な責任を負っていて、この責任はプロダクトマネージャーに重くのしかかる。

時間管理などのスキルやプロダクトマネジメントの技術が身についたとしても、結果を残せるプロダクトマネージャーの毎日は、担当する製品にかかりきりとなる。家族と過ごしたりプライベートな生活も楽しんだりしながら、プロダクトマネージャーとして成功することはできるだろうか? 私はできると信じる。少なくとも、みなさんも一度くらいは似たような状況を経験しているだろう。ただ、仕事は週40時間、しかも、1日が終わって家に帰ったら仕事のことはきれいに忘れたい、というような人も多いが、残念ながら、プロダクトマネージャーとして成功したい人にとってはそういう生活は望めない。

私は、プロダクトマネジメントで結果を出すためにどれぐらい働く必要があるかについては、プロダクトマネージャー候補者に対してずいぶん率直に語っているつもりだ。何時間働けばいいか、という話をしているのではない。もし、プロダクトマネージャーに対して、緊急事態だから仕事に来るようにとか、その他の事情でオフィスにいてもらわないと困るなどといちいち指示しなければならないとしたら、プロダクトマネージャーの人選を誤ったということである。

プロジェクトに関わる度合やプロジェクトに注ぎ込むエネルギーは、プロジェクトの期間中ずっと一定というわけではないことを覚えておいてほしい。ある局面では、他の局面よりもはるかに集中して取り組まなければならないだろう。結果を出せるプロダクトマネージャーにとって変わることがないのは、製品に対する思い入れと、製品開発を成功させるためにはどんな労をも厭わないという覚悟だ。

資質5:誠実さ

製品開発チームの全メンバーの中で、会社の価値と製品の価値をいちばんじっくり考えなければならないのは、プロダクトマネージャーである。多くの会社では、その組織上、プロダクトマネージャーは製品開発チームのメンバーを直接管理しているわけではないので、メンバーに対して自分の命令どおりに動くように指示することなどとてもできない。そうではなくて、プロダクトマネージャーは、チームのメンバーに対して影響を与えることを通じて仕事を進めなければならない。このようにメンバーを説得できるのは、お互いの信頼と尊敬があればこそ可能なことで、どちらもプロダクトマネージャーの誠実さにかかっている。

信頼と尊敬は、成功を目指すプロダクトマネージャーが有能な製品開発チームリーダーとしての資質やスキルを発揮することによって、時間をかけて築き上げられる。プロダクトマネージャーは、チームメンバーと接する中で、誠実さ、率直さ、公平さがないと思われてしまえば、プロジェクトの成功に必要な協力やチームワークは望めなくなるだろう。

プロダクトマネージャーは、製品開発チームのあらゆる業務について専門家である必要はないが、チームメンバーそれぞれの任務を深く理解し、尊重しなければいけない。そして、彼らを信頼して仕事を任せなければならない。

プロダクトマネージャーは、製品開発チームと経営陣や営業部門との間にいるので、難しい立場に立たされることがよくある。たとえば、製品をもっと早く出せとか、大口顧客向けに特別な仕様を加えてくれ、などと要求されたりする。製品開発チームの面々は、プロダクトマネージャーがこういう状況をどう処理するかをしっかりと観察しているものだ。

知性もそうだが、誠実さを評価するのも難しいかもしれない。特に、社内では知られていない外部の候補者の場合は、なおさらそうだ。プロダクトマネージャーの経験がある候補者の場合は、過去の製品開発プロジェクトでのさまざまなストレスをどのように処理したかを質問してみるのもよい。特定の状況の詳細、たとえば、どうして困難な状況になったのか、どう対処したのか、などとしつこく尋ねてみよう。

資質6:自信

多くの人は、経験を積めば自信がつくと思っている。確かに経験は自信をつけるのに役立つけれど、経験豊かなプロダクトマネージャーが自信を持っていると限らない。逆に、大学を卒業したばかりなのに、妙に自信満々の連中もいる。(たいていは、これから何を経験するのかをまだ知らないことから来る自信に過ぎないのだが。)

自信は重要な資質の 1つだ。というのも、製品開発チーム全員、経営陣、そして営業部門は、自分たちが時間と金とキャリア (経験と知識) をつぎ込んでいるものが成功するか、目指す方向が正しいかについて、プロダクトマネージャーが確信させてくれるのを期待しているからだ。自信は、説得力のあるコミュニケーションをするときに決め手となる要素であり、人は、自信のないリーダーよりも自信のあるリーダーについて行こうとするものだ。

資質7:姿勢

結果を出せるプロダクトマネージャーは、自分自身のことを担当する製品の最高責任者だと考えている。製品について全責任を負い、言い訳をしない。自分にはよく売れる製品を作ることに対する最終的な責任がある、と理解している。さらに、製品を市場に出せない場合や、発売にはこぎつけたものの売れなかった場合には、さまざまな理由があることを知っている。作るのが難しすぎる、市場に出すまでに時間がかかりすぎる、コストがかかりすぎる、複雑すぎる、などだ。でも、こういう障害をことごとく克服するのが自分の仕事である、と心得ている。

これは、プロダクトマネージャーが製品開発チームを細かいところまで管理するとか、すべて自分だけでやろうする、という意味ではない。そうではなくて、うまくいかないことがあれば自分がすぐに責任をとり、うまくいけばチームのメンバーの手柄にするのだ。結果を出せるプロダクトマネージャーは、自分の構想が現実の製品となるのは、チームの他のメンバーのおかげだが、彼らが実現しようとしているのはプロダクトマネージャー自身の製品ビジョンなのだ、と理解している。

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第6章プロダクトマネージャーの条件(下)は、明日アップします。

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